旭川荘の創設に先立ち、川﨑祐宣初代理事長は1954(昭和29)年に欧米諸国を訪問し、先進施設を視察。また江草安彦第2代理事長は1963(昭和38)年にパリ大学等で精神医学・神経医学を学び、1965(昭和40)年には欧州諸国の施設を視察しました。このように旭川荘は草創期から、海外の優れた理念や方法を積極的に学んできました。その手法は、単に欧米を真似るのではなく、文化や価値観、経済力の違いも考慮した上で、岡山の、日本の風土に合った福祉システムの構築を目指したものでした。その後も旭川荘は百数十人の職員を海外研修や国際学会等に積極的に送り出し、先進的な知見の習得や資質向上に努めています。
1970年代には旭川荘にアジア諸国から研修依頼が来るようになりました。これまで欧米から得た知識・技術をもとに積み上げたノウハウを広くアジアに伝えるべく、旭川荘は積極的にこれを受け入れてきました。受け入れに当たっては、研修生が日本の風土や文化を認識した上で旭川荘の福祉サービスを学ぶことができるよう配意するとともに、旭川荘の職員も研修生の母国の文化やそれに基づく福祉を把握して研修生に接することで、両国の理解を深め、福祉の発展に寄与するという「学び合い」の姿勢を重視してきました。
国内外の身体障害者が参加して1988(昭和63)年から2005(平成17)年まで開催された「津山国際交流車いす駅伝競走大会」では、中国、韓国、タイなどの海外選手団の宿泊、送迎などを担当し、職員や障害者同士の交流を深めました。
ノーマライゼーションの提唱者であるデンマークのバンク・ミケルセン氏(1985年来岡)など各分野の著名人を招いた講演会や、アジア・アフリカ諸国の障害福祉関係者が集う「アジア・アフリカフォーラムを1983(昭和58)年から1988年まで計6回開催するなど、国際的な講演会を積極的に開催してきました。
旭川荘は、多くの国からの研修生や視察団を積極的に受け入れてきました。これまでに旭川荘が海外から受け入れた研修生は中国、韓国、タイなど32カ国から700人以上、視察団は1,000人以上に及んでいます。
2019(令和元)年に上海市で、2020年には岡山市で「岡山―上海障害児者絵画交流展」を開催。旭川荘の施設や上海市の特別支援学校の子どもらが絵画を出展し、開会式等で交流を深めました。2024年には児童福祉施設や日本人学校の子どもも加わり、上海市と倉敷市で「岡山―上海友好絵画展」を開催。言葉の壁を越え、障害の有無も越えて心に語りかけてくる「絵画」の魅力を伝えました。
海外の日本人幼稚園・小学校に通う発達障害のある子どもは、国内と同様の支援を受けられない状況にあります。旭川荘では、在上海日本国総領事館等からの相談を受け、2021(令和3)年から2024年にかけて、臨床心理士が上海市の日本人小学校・幼稚園の先生方に向けて、基礎的な研修会や個別ケースのカンファレンスを主としてオンラインにより実施しました。そして今後の状況の改善につなげるべく、その成果と課題を関係行政機関と共有しています。
日本の介護福祉士資格を取得し、将来母国で介護人材として活躍することを目指して、日本語学校や専門学校で学ぶ東南アジアの学生に対して、奨学金を貸与する事業を2017(平成29)年から実施。これまでにミャンマーやベトナムの留学生十数人が介護福祉士の資格を取得し、旭川荘の各施設で研鑽を積んでいます。